愛しき香り

まだ独り身で働いていた頃、

どんなに遅く帰っても晩酌を欠かさず、気絶するように眠っては、起きて勤めに急ぐ日々。

当時は凍らせたパンを冷たいまま食べることが好きで、コンビニおにぎりとゆで卵、インスタントのお味噌汁がが昼食でした。

妻となり母となり、

炊きたてのご飯や、8枚切りの食パンが焼ける香り、ゆで卵の踊る音やお味噌汁の温まる湯気、どれもが泣けるほど愛おしい。

時にはどうしようもなく苛立ち、虚無感に襲われたりもするけれど、

あの頃の母も纏っていた香りたちが、私を我にかえらせてくれる。

‪さかりすぎて かうのこのみも もどりけり‬